エジェクタピンに使用される材質とは?

今回はエジェクタピンの材質についてお話します。一般的にダイカストでは、金型温度は150℃~250℃ですが、溶湯との接触によって金型450~550℃に加熱されることがあります。エジェクタピンにおいても高温環境下で使用されるため、高温強度が強い材質が必要となります。また、繰り返し使用されるため、耐摩耗性、耐溶損性、靭性等が求められます。エジェクタピンに使用される材質をいくつか紹介します。

SKS2SKS3

合金工具鋼SKS2、SKS3は、硬く摩耗しにくいことが特徴です。多くのCを含んでおり、Crにより焼入れ性を上げることでHRC60以上まで硬度を上げることができます。成分にCr、W、Vが含まれ硬いカーバイドを作って耐摩耗性を向上させます。しかし、靭性は低いため、折損強度は高くありません。

SKH2

高速度工具鋼(ハイス)SKHのHはハイスピードカッテングの頭文字で熱に強いことが特徴です。600℃まで使用しても軟化しません。SKS2、SKS3と比較しC量は少ないですが、Crを多く含んでおり、耐熱性、焼入れ性を高めています。W系ハイスのSKH2では、大量のWを混入し、高温強度を向上しています。Mo系ハイスのSKH51は射出成形金型で多く使用されます。高温強度はW系ハイスより劣りますが、Moを含ませることで粘り強さを高めています。

SKD661

合金工具鋼SKD6、61は熱間強さを重視したダイス鋼です。C量を減らし、熱亀裂を防いでいます。Mo、Cr、Mo、Vなどを添加し、高温強度、熱伝導率も高く、熱衝撃に対して安定しています。靭性はSKHより高く折損強度に優れます。SKD6とSKD61の違いはVの量です。Vの量はSKD61のほうが多く、SKD6より高温強度が高くなります。エジェクタピンにはSKD61が多く使用されています。

DAC

株式会社プロテリアル製DACはJIS規格におけるSKD61相当材です。DACは高温強度と靭性のバランスに優れた材質で、機械的性質の等方化(アイソトロピイ)を図ることで、SKD61に比べ靭性に優れる特徴を有しています。
当社では主としてDACを使用したエジェクタピンを生産しています。

窒化処理を施すことができる材質は?

合金元素量の少ないSKS2,3は窒化に不向きな材質となります。一方、SKHやSKD61、DACは窒化の際に硬さに最も寄与するCr等を含んでおり窒化に向いている材質です。
>>窒化処理について詳しくはこちら!

エジェクタピンのことなら、秦精工にお任せください!

今回は、エジェクタピンに使用される材質についてご紹介しました。当社では、今回ご紹介した材質の中でも、"DAC"を採用しており、ガス窒化による化合物層と拡散層により耐摩耗・耐溶損性を最大限に高めています。また、SKH51より靭性に優れたDACを使用することで、衝撃に強く折損しにくい耐久性の高いエジェクタピンを生産しています。エジェクタピンのトラブルでお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

前へ

なぜ、秦精工のエジェクタピンには、ガス窒化処理が施されているのか?

次へ

エジェクタピンの溶損対策