なぜ、秦精工のエジェクタピンには、ガス窒化処理が施されているのか?

 秦精工のエジェクタピンの最大の特長はなんといっても高耐久性です。この高耐久性を実現するためにキーとなるのが窒化処理です。今回はこの窒化処理について詳しく解説します。

 通常、窒化処理は500600℃で処理します。名前の通り窒素を主体とし、窒素を拡散浸透させ、機械的強度をより高めます。変態点以下の温度で処理できるため、焼き歪みが少なく、焼き割れも起きません。実は、この窒化には様々な種類がありますので、代表的な窒化処理方法についてご説明します。

代表的な窒化処理の種類

1.ガス窒化

 アンモニアガスを主成分とした窒素ガスが用いられ、500600℃の低温で処理を行います。製品にガスを流し、窒素原子を浸透させます。窒素はアルミニウム、クロム、モリブデンとの結びつきが強く、拡散浸透した窒素は、鉄-窒素化合物の化合物層と、窒素が固溶した拡散層を形成します。化合物層は一般的に、母材や拡散層よりも硬さが高く,主に耐摩耗性を向上させます。一方,拡散層は耐疲労性の向上に寄与します。0.10.2mmと深い硬化層を得られますが、処理には20100時間と多くの時間を要します。

2.ガス軟窒化

 軟窒化は低炭素鋼、高合金鋼、鋳鉄等、ほとんどの鋼種に処理が可能です。ガス軟窒化は、アンモニアガス、一酸化炭素ガス、またはアンモニアガスと窒素と二酸化炭素の混合ガス雰囲気中で、500600℃に2~5時間加熱保持し短時間で処理します。アンモニアから分解した窒素成分で窒化し、二酸化炭素から分解した炭素成分で浸炭し、製品表面に炭窒化物による化合物層被膜を生成する処理です。無公害で処理できることも特徴の一つです。硬化層は0.01mm程度と薄いですが、短時間で処理できることが特徴です。

3.イソナイト(タフトライド)

 イソナイト処理は塩浴軟窒化処理のことです。タフトライド処理との違いは、特許の関係で名前が違うだけです。国内では2007年にイソナイト処理という商標に切り替わりました。シアン化カリウムとシアン酸カリウムを成分とし、500600℃のソルトバス(塩浴)に鋼材を浸漬することで行われます。表面の硬化層は0.010.02mmと薄く、1~3時間と短時間で完了します。塩浴には有害なシアンが入っており、公害には注意が必要です。

4.プラズマ(イオン)窒化

 プラズマ(イオン)窒化は、グロー放電により、窒素イオンを製品表面に衝突させます。衝突作用により、加熱し、鉄と窒素が結合します。繰り返されることで表面の窒素濃度が上昇し、生成された窒化物が拡散浸透します。化合物層なしに窒化できるので変寸が少なく、寸法精度も優れます。また、作業環境が良く、省資源、省エネ型の処理法となります。

では、なぜ当社のエジェクタピンにはガス窒化処理が施されているのか?

いかがでしょうか。窒化処理には様々な種類があることがお分かり頂けたかと思います。実は当社のエジェクタピンには、この中のガス窒化処理が施されています。なぜ、ガス窒化処理なのでしょうか。

ズバリ、理由は他の窒化処理と比較し、ガス窒化処理は長時間をかけ、じっくりと処理することで、深い窒化層を形成することができるからです。この深い窒化層により、耐摩耗性、耐溶損性、疲労強度を高め、驚くほどの高耐久性に直結するのです。

「エジェクタピンの折損を防ぎ、ダイカスト生産性を向上させる秘訣」にて、"なぜ当社の窒化処理を施したエジェクタピンが優れるのか"について記載してありますので、気になる方は是非ご一読ください。

>>エジェクタピンの折損を防ぎ、ダイカスト生産性を向上させる秘訣③

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