エジェクタピンの折損を防ぎ、ダイカスト生産性を向上させる秘訣②

第二回:エジェクタピンは、強度と共に靭性に優れた材質を選択する

エジェクタピンの折損を防ぎ、ダイカスト生産性を向上させる秘訣として、第一回目はと題して、エジェクタピンに求められる特性のポイントをお伝えしました。第二回目はその中でお伝えした、エジェクタピンに求められる強度と靭性について詳しくお伝えしたいと思います。

エジェクタピンの折損を回避するためのまず押さえておかなければならない第一のポイントは、エジェクタピンの材料と母材硬さの選定です。エジェクタピンの材料に要求される特性としては、ダイカスト鋳造温度における硬さに加え、靭性、耐摩耗性、耐熱性などが挙げられます。

一般的にエジェクタピンにはSKD61が多く使用されています。しかし、エジェクタピンの中には「SKD61-快削プリハードン鋼」が使用されているケースもあります。この「SKD61-快削プリハードン鋼」は、SKD61に対して硫黄を添加して被加工性を改善した材料である一方、靭性と熱間強度はSKD61より劣ってしまいます。エジェクタピンの材料としてこの靭性が劣るものを採用すると、離形時の圧縮応力などにより折損に繋がる可能性が高まります。

このように、「SKD61-快削プリハードン鋼」よりもSKD61を採用した方が靭性に優れているということなのですが、それでは、SKD61よりも更に靭性が高くエジェクタピンに適した材料というものは存在するのでしょうか?

そこで下記の図1のグラフをご覧ください。これはSKD61と日立金属株式会社製DAC(SKD61材相当)の靭性を比較したグラフになりますが、DACの方がSKD61よりも優れた特性を有していることがお分かり頂けると思います。

スライド1.PNG

なおDACは高温強度と靭性のバランスに優れた材料で、機械的性質の等方化(アイソトロピイ)を図ることで、一般SKD61に比べ靭性に優れる特徴を有しているのです。

さらにSKD61DACの靭性の差を比較するため、当社ではエジェクタピンの先端に離型による強い圧縮応力が作用したことを想定し、SKD61DACそれぞれで製作した実際のエジェクタピン(φ10x500)を使用して圧縮試験を行いました。図2にエジェクタピンの圧縮試験結果を示します。圧縮応力をかけるとSKD61製エジェクタピンは変位点(約5mm)で折損しましたが、DAC製のエジェクタピンは15mm変位しても折損することなく、屈曲のみに踏みとどまりました。

スライド2.PNG

ここまでの説明で、一般的なSKD61よりもDAC材を使ったエジェクタピンの方が、靭性も高く使用中に折損が発生しにくいことがお分かり頂けたでしょうか?

ぜひ皆様がお使いのエジェクタピンの材質も、一度チェックされることをお勧め致します。

なお秦精工では、こうした靭性に優れた日立金属製DAC材をエジェクタピンの材料として採用しております。当社は約50年前の創業以来、近隣の日立金属株式会社(安来工場)と深い繋がりがあり、日立金属株式会社でHRC4045に熱処理、製造されたエジェクタピン専用材料を供給頂いております。これまで生産・供給してきたエジェクタピンは、自動車業界などのダイカスト製造現場でご採用頂き、高いご評価を頂いています。

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