エジェクタピンの折損を防ぎ、ダイカスト生産性を向上させる秘訣①

第一回:そのエジェクタピン、最適な特性になっていますか?

 ダイカストの生産性・品質・コストに直結するエジェクタピン(押出しピン)は重要な部品である反面、強度が高ければよいと思われがちですが、実際は様々な特性を満足していないと本来の性能を発揮できません。そこで秦精工では、エジェクタピンのメーカーとして、エジェクタピンが折損してしまう原因とは何なのか、折損対策はどのように行うべきか、さらに本当に良いエジェクタピンとはどんな特性を持ち、ユーザー様はどこを重視して選択すればいいのか、という視点で、全4回シリーズで皆様に情報発信を行って参りたいと思います。

1.エジェクタピンの折損は、生産性・品質低下、コストアップを招く

 ダイカストの生産中にエジェクタピン(押出しピン)が一度折損すると、鋳造停止により生産性が著しく低下してしまうのはよく知られていますが、この他にも、ダイカストの寸法精度や外観品質、内部品質が大きく低下し、さらには金型の短命化に繋がるといった可能性もあります。

 エジェクタピンはダイカストマシンや金型に比較するととても小さな部品ですが、生産性・品質・コストに与える影響はとても大きいのです。

 この第一回目のコラムでは、ダイカストの生産性/品質を向上させ、さらにコスト低減を行うためには、どういったポイントを見てエジェクタピンを採用すべきか、ということを解説していきたいと思います。

2.エジェクタピン折損の原因と、求められる性能

 エジェクタピンの折損には様々な原因があります。まず、①エジェクタピンの配置、使用本数、軸径などが不適切である場合には、押出し時に折損する傾向が高くなります。次に、②ダイカストの生産を続けていると、エジェクタピンに焼付きやカジリが発生して鋳造合金が付着したところに、継続して高温・高圧にさらされるとエジェクタピンが強度不足となります。その結果、型開きや離形、押出し時に高い応力が生じて折損(破損)、変形することがあります。他にも③ダイカストの抱き付き力が大きいと、エジェクタピンの先端に離形時の強い圧縮応力が作用し、エジェクタピンの折損、屈曲、破壊に繋がります。

このように、エジェクタピンにはダイカスト鋳造時に大きな熱・応力・負荷がかかるため、こうした厳しい使用環境下でも折れない・折れにくいという特性を持っていること、つまり、エジェクタピンが熱間強度と靭性に優れていることが求められるのですが、それでは一体、折れないエジェクタピンを選択するためにはどういったポイントを押さえるべきなのでしょうか。

そのポイントとは、下記の3つになります。

①強度に加え、靭性に優れた材質を選択する
一般的にはSKD61が採用されることが多いのですが、実はSKD61にも種類があり、強度・靭性が劣っているものも存在するので注意が必要です。

②耐久性の高い、耐摩耗性・耐溶損性等を向上させた製品を選択する
エジェクタピンは耐久性を向上させるために窒化処理が行われますが、この窒化処理の程度によっては拡散層が薄くなります。その場合には早期に摩耗が進み、折損などのトラブルを引き起こします。

③高精度に仕上げられた製品を選択する
エジェクタピンメーカーには、円筒度、真円度、面粗さなどを一定以上のレベルで管理し、それを安定的に供給することが求められます。

以上3つのポイントをお伝えいたしましたが、ぜひ皆様が採用されているエジェクタピンも一度チェックしてみてください。次回以降、秦精工からは比較データなどを用いながら、それぞれのポイントをさらに深堀りしていきたいと思います。私たちが発信するエジェクタピンに関する情報が、皆様のお役に立てますと幸いです。

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